人権の尊重

マテリアリティ
関連するESG:
S
人権(サプライチェーン含む)
すべての人に健康と福祉を 質の高い教育をみんなに ジェンダー平等を実現しよう 働きがいも経済成長も

マネジメントアプローチ

考え方・方針

人権を尊重することは、東洋紡グループが社会の一員としての責任を果たすとともに、信頼される企業としてあり続けるために欠くことのできない要素の一つであると考えています。中でも、当社グループの重要なステークホルダーである従業員やお取引先さまの権利を尊重することは、こうした方々が自らの能力を発揮し、いきいきと働く上で必要不可欠であると考えています。こうした認識に基づき、当社グループ「東洋紡グループ企業行動憲章」の10原則に「4. 人権の尊重」「6. 従業員の活躍」を掲げています。

また、当社グループは、「国際人権章典」、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」、「子どもの権利とビジネス原則」、「ビジネスと人権に関する指導原則」等の人権に関する国際規範を支持、尊重しています。

<東洋紡グループ人権方針>

東洋紡グループは、企業理念体系「TOYOBO PVVs」において、その理念を『順理則裕』(なすべきことをなし、ゆたかにする)と定め、そのめざす姿を「私たちは、素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループになります」と掲げています。また、東洋紡グループ企業行動憲章や東洋紡グループ社員行動基準において、人権の尊重を掲げ、すべての人が生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利について平等であることを常に意識し、企業活動を展開し、活動全体において、人権を尊重する責任を果たします。

  1. 人権の尊重に関連した法令や規範の遵守

    東洋紡グループは、国際連合「ビジネスと人権に関する指導原則」を踏まえ、すべての人の基本的人権について規定した国際連合の国際人権章典(「世界人権宣言」「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」「市民的、政治的権利に関する国際規約」)ならびに労働における基本的権利を規定した国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則および権利に関するILO宣言」による中核的労働基準等、人権に関する国際規範を支持、尊重します。あわせて、「国際連合グローバル・コンパクト」署名企業として、同10原則等を支持、尊重します。
    また、東洋紡グループは、企業活動を行うそれぞれの国や地域の法令や規範を遵守します。国際的に認められた人権規範と各国の法令に差異がある場合には、国際的に認められた人権規範を最大限尊重するための方法を追求します。

  2. 適用範囲

    本方針は、東洋紡グループのすべての役員・従業員に適用します。また、東洋紡グループの事業・製品・サービスに関係するすべての取引先関係者に対しても、本方針を支持いただくことを求め、東洋紡グループとともに人権尊重に取り組んでいただくことを期待します。

  3. 企業活動全体を通じた人権尊重の責任

    東洋紡グループは、自らが人権を侵害しないことはもちろんのこと、その企業活動において人権に対する負の影響が生じていることが判明した場合には、その是正のため、適切に対応することにより、自らの人権尊重責務を果たします。

  4. 人権デュー・デリジェンス

    東洋紡グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に即した人権デュー・デリジェンスの仕組みを構築し、その仕組みを通じて、当社グループがライツホルダー*に与える負の影響を特定し、その防止、または軽減に取り組みます。
    * 企業活動を通じて、その人権に影響を与えるステークホルダー(従業員・消費者・地域住民)

  5. 是正・救済

    東洋紡グループは、当社グループの企業活動が、人権に対する負の影響を引き起こした、あるいは取引先関係者等を通じた人権に対する負の影響への関与が明らかになった、または関与が疑われる場合、適切な手段・手続きを通じて、その是正と救済に取り組みます。

  6. 教育

    東洋紡グループは、本方針が当社グループの企業活動全体に定着するよう、必要な手続きへの反映に努めます。また、本方針が正しく理解され、適切に運用されるよう、当社グループのすべての役員・従業員を啓発・教育するとともに、取引先関係者等にも理解いただくための取り組みを推進します。

  7. 対話

    東洋紡グループは、本方針を実行するプロセスにおいて、外部有識者・専門家の人権に関する知識を適宜活用し、また、ライツホルダーと真摯に対話します。

  8. 情報開示

    東洋紡グループは、人権尊重の取り組みや人権デュー・デリジェンスの実施状況・結果をWEBサイト等で公表・報告します。

本方針は、2024年2月21日、東洋紡株式会社の取締役会において承認されています。

制定日 2020年(令和2年)10月26日
改定日 2024年(令和6年)2月21日

東洋紡株式会社 代表取締役社長 社長執行役員
竹内郁夫

関連する方針など

体制

当社グループは「人権の尊重」に積極的かつ体系的に取り組むことを目指し、当社グループの従業員に関しては人事・労務総括部労務部ダイバーシティ推進グループに、サプライチェーンに関しては調達・物流総括部調達・物流企画部企画グループに、それぞれ担当者を配置しています。

国際的な人権課題など企業が留意すべき事項について理解を深め、人権デュー・デリジェンスへの取り組みの準備を進めています。

人権に関する監督・責任者は、サステナビリティ推進本部長、調達・物流総括部を統括する役員(常務執行役員)となります。

目標とKPI

<目標>

  • 東洋紡グループ全体で、基本的人権と多様性の尊重に取り組み、従業員にも研修などを通じ浸透を図ります。
  • この取り組みを通じ、公正で、社会から信頼される企業を目指します。

<KPIと実績>

取り組み項目 KPI 目標(2025年度) 実績(2022年度)
  • 人権侵害の回避
  • 児童労働、強制労働の禁止
  • 人権関連法規制(「現代奴隷法」など)への対応
  • 雇用処遇における均等、均衡待遇の徹底
  1. 人権教育・研修の実施状況
  1. 単体従業員の20%を対象に1回/年
  1. 48.0%
  • 対象は、東洋紡(株)、東洋紡STC(株)、(株)東洋紡システムクリエート

取り組み

グローバル視点での人権配慮

当社グループの拠点がある国や地域では、政治、経済、社会の状況を反映した、雇用および職業に関する差別、不当な労働条件、強制労働や児童労働、外国人労働者への人権侵害、腐敗への関与など、人権に関するさまざまな課題があります。当社グループの各拠点では、これらの人権に関する課題への配慮を欠かすことはできません。

当社グループとして考慮すべき課題を把握するために、「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」の人権に関する分科会に参加しています。参加企業とともに国際的な人権課題など企業が留意すべき事項について情報収集し、人権課題への理解を深めています。今後は当社グループの事業拠点において、考慮すべき人権課題の特定を進めていきます。

テーマ 取り組み内容
児童労働の防止 事業活動において満15歳、または義務教育を修了する年齢、またはその国・地域の雇用最低年齢のうち、いずれか最も高い年齢に満たない者に労働をさせることを禁じています
強制労働の防止 人材の採用にあたっては、必ず応募者からの申し込みを前提としており、1回以上の採用選考を経て合格を通知しています。 また入社の際には労働条件を提示し、応募者との合意のもと、雇用を開始しています
生活賃金の支援 事業活動を行う国や地域の最低賃金を定めた法令に従い、給与を支払うことを順守しています

「労働と人権」調査の実施

2022年度、当社国内事業所(単体)に対し、児童労働や雇用平等、安全衛生などに関する「労働と人権」調査を実施しました。調査の結果、いずれも人権関連の法令違反はないことを確認しました。

外国人技能実習生に関しては、該当事業所に対して、技能実習の実施・管理、労働関係法令の順守について調査を行いました。調査の結果、いずれも順守、実施されていることを確認しました。

多様性と機会均等の向上

当社グループでは、働き方・キャリア・性別・国籍・人種・信条の異なる人たちの中にあって、お互いを認め合い、協力して目標に向けた努力をすることが個人と組織の成長につながると理解しています。異なる意見、多様な人材の存在価値を認め合い、高い目標へと力を合わせて努力することを大切にしています。

労働者の権利の尊重

結社の自由と団体交渉権の尊重

当社グループは、結社の自由と団体交渉権を尊重しています。

「TOYOBO PVVs」を実現することを労使共通の目標と定め、建設的かつ安定した労使関係の構築に努めています。当社にはユニオンショップ制の労働組合が結成されており、労使で合意した労働協約において「労働組合への加入が認められている従業員」は全員労働組合に加入しています。当社労働組合は全ての組合員を代表しており、また労使間の交渉結果は全ての組合員に無条件に適用されます。なお、管理職などマネジメントレベル以上の従業員は労使合意により加入が認められておらず、全従業員の組合加入率は85.1%(2022年度末現在)となっています。

  • 職場において労働者が必ず労働組合に加入しなければならないという制度

労使の対話

「TOYOBO PVVs」の実現に向けて労使間で率直な議論を重ね、従業員一人一人が生きがい・働きがいを持つための基盤づくりを推進しています。労働組合(本部)と会社による「中央経営協議会」を年1回、また「支部経営協議会」を全国9支部で各1回開催しています。組合からは中央経営協議会は本部役員が、支部経営協議会は各支部の役員が参加します。会社からは、中央経営協議会は社長が、支部経営協議会は所管の事業所長・工場長が参加します。労使協議では経営状況、賃金増額改定、労働環境状況などのテーマで議論しています。

過度の労働時間の削減

従業員が意識を変えて効率的に働き、仕事と私生活の充実を実現できるよう、「働き方改革」に取り組んでいます。また、将来的には7日間に1日以上の休日を確保することも目指します。

労働基準の不順守への対応
単位 集計範囲 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
重大な法制・ルール違反数 グローバル 0 0 0 0 0
重大な労働基準の不順守 国内合計 0 0 0 0 0
重大な人権侵害の発生件数 国内合計 0 0 0 0 0
コンプライアンスに関わる
事故・事件で刑事告発件数
国内合計 0 0 0 0 0

苦情処理・内部通報制度の設置

「苦情処理委員会」や内部通報制度である「コンプライアンス相談窓口」、また今般開設した「LGBTQ+相談窓口」において人権関連の相談・通報を受け付けています。苦情処理委員会では、各事業所で会社側・労働側の委員を選出し、男女雇用機会均等法に関わる問題について従業員から委員に相談があり、都度対処します。これらの窓口を安心して利用できるよう、相談者の氏名などのプライバシーを守ること、相談・通報により相談者に不利益が生じないことを保証しています。また、コンプライアンスアンケートを通じて人権問題の早期把握・解決に努めています。

社内浸透の取り組み

行動憲章・コンプライアンスマニュアルの社内周知

当社グループは、「東洋紡グループ企業行動憲章」の英語版を作成し、世界中の従業員が同じビジョンを共有できるよう社内浸透に取り組んでいます。また、従業員向けの「東洋紡グループ コンプライアンスマニュアル」を用いて、人権尊重、差別禁止、児童労働・強制労働禁止、個人情報保護に関するルールや事例の周知を図っています。

さらに、採用面接官に対して面接時の人権に関する注意事項の周知、教育を実施しています。

人権に関する研修

「人権方針」の周知・理解を含んだ研修などを開催し、従業員の人権意識向上を図っています。2019年度からグループ会社従業員を対象とした、外国人労働者の人権に関する教育・啓発を実施し、お取引先さまに対しても取り組みをお願いしています。

2022年度も引き続き、各事業所において、新入社員を対象とした研修、階層別教育、講演会、人権問題推進委員研修会等を実施し、515人が参加しました。

2023年度は、役員、従業員を対象として「ビジネスと人権」をテーマとした以下の勉強会を実施しました。

2023年度「ビジネスと人権」勉強会
講師 対象
6月 帝人(株)サステナビリティ推進部長 大崎 修一氏 役員
10月 (株)karna 代表取締役 森本美紀子氏 事業所労務担当者
12月 大阪経済法科大学 教授 菅原 絵美氏 役員
2月・3月 サステナビリティ推進部、人事・労務総括部、調達・物流総括部 役員・従業員

2023年10月 事業所労務担当者向け勉強会

2023年10月 事業所労務担当者向け勉強会

2023年12月 役員向け勉強会

2023年12月 役員向け勉強会

2024年2月 役員・従業員向け勉強会

2024年2月 役員・従業員向け勉強会

10月から、全役員・従業員(主要子会社3社を含む)を対象に「ビジネスと人権」に関する動画(全14本)の配信を開始、オンデマンド視聴を可能にしました。

また、2023年度から管理職向けコンプライアンス勉強会のテーマに「ビジネスと人権」を加え、全14回実施しました。年度内にグループ会社12社に展開する予定です(グループ会社では隔年実施)。

グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン分科会への参加

「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」の人権に関する分科会に参加し、人権NGOや参加企業とともに国際的な人権課題など企業が留意すべき事項についての学びに参加して、人権課題への理解を深めて、当社の啓発活動に生かしています。

サプライチェーンにおける人権尊重

CSR調達ガイドラインの改訂・周知

2022年9月にサプライチェーン全体でSDGsを達成するため、特に人権尊重、環境配慮を強化した見直しを実施し、「CSR調達ガイドライン」を改訂しました。お取引さまの選定にあたって人権に関する事項(児童労働・強制労働や、LGBTQを含むあらゆる属性の人々への差別を禁止するなど)を考慮することを明記し、当ガイドラインを主要なお取引先さまを含むビジネス・パートナーに周知しています。

CSR調達アンケートを通じた人権リスク評価

また、主要なお取引先さまに対して、「CSR調達ガイドライン」に基づいた「CSR調達アンケート」を実施し、その中に含まれる人権の項目を通じて、お取引先さまの人権に対する取り組みを評価しています。具体的には、アンケート結果を基に、国・地域、業種、人員構成などを考慮した評価を実施し、リスクが高いと判断されたお取引先さまに対しては、ヒアリングなどによる適切なフォローアップを実行しています。

新規・既存お取引先さまへの対応

新規のお取引先さまには取引開始の際に、既存のお取引先さまには定期的にアンケートのご協力をお願いしています。

ステークホルダーとのエンゲージメント

地域社会とのエンゲージメント

地域のステークホルダーの人権を守るため、行政と連携をとりながら、近隣住民や地域自治会、協同組合等との情報交換、地道な広報活動を通じて、地域社会の人権に影響する課題についてエンゲージメントを実施しています。エンゲージメントの結果を騒音、異臭、排水対策などに役立てています。

例えば、敦賀事業所では、地域自治会や共同組合と年1回、情報交換を行っています。また、各種定期点検時には、事前に近隣地区へ周知を行っています。

外国人技能実習生とのエンゲージメント

外国人技能実習生とのエンゲージメントについては、該当事業所にて母国語での資料作成、公的な手続き、病院の付き添いなどの支援を行っています。また、生活様式の違いによる日常生活に関する困りごとを聞く場を設けて、都度対応しています。

イニシアチブへの参加

業界団体である日本紡績協会、日本化学繊維協会の労務分科会に参加しています。同分科会では、労働基準を含む労働関係の問題(労働時間、休暇制度、人事制度、退職金など)や労務問題(コロナ対応、テレワークなどの働き方など)などについて話し合いを行っています。

2023年9月に当社は、日本繊維産業連盟の「繊維産業における責任ある企業行動実施宣言」を実施しました。これは、同連盟が2022年に公表した「繊維産業における責任ある企業行動ガイドライン」の趣旨を理解し、同ガイドラインに沿って人権尊重の取り組みを進めることに賛同することを宣言したものです(2023年11月現在、731社が宣言)。

2023年11月、日本化学繊維協会は同協会の正会員をメンバーとして「人権DD対応連絡会」を設置し、当社も参画しています。連絡会では、サプライチェーン上の人権問題を中心に、官公庁や日本繊維産業連盟の動向、各社の対応状況を共有し、講演会などを含め広く情報交換や意見交換をしています。