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製品紹介

低吸着シーラントとは、包装フィルムの最内層(シーラント層)において、内容物成分の吸着を極めて低減した機能性材料です。
従来、シーラント層にはポリプロピレン(PP)系やポリエチレン(PE)系のフィルムが使用されていましたが、これらのシーラントフィルムでは、内容物に含まれる香料・有効成分・溶剤などがシーラントに移行・吸着し、以下の問題が起きていました。
低吸着シーラントはこれらの問題を解決し、内容物の価値を守る包装を実現します。
低吸着シーラントは、以下の用途で使用されています。
低吸着シーラントが必要とされる背景には、単に成分減少による有効性への懸念だけでなく、医薬・化粧品分野における品質規格の遵守リスクが存在します。
■ 有効成分の減少は「品質NG」につながる
医薬品や医薬部外品では、有効成分の含有量が厳しく管理されており、規定範囲を下回ると品質基準を満たせなくなる可能性があり、含有量が不足すると、本来期待される効果が十分に発揮されないためです。一方で、有効成分の含有量を多めに配合すると、製造直後などのタイミングでは逆に過剰となり、安全性や品質面でリスクが生じる可能性があります。
つまり、成分吸着の問題は単なるロスやコストの問題ではなく、品質リスクそのものです。安定した品質を実現するには、配合量で調整するのではなく、包装材側で吸着を抑制することが重要になります。
参考文献
https://www.pref.kyoto.jp/yakumu/documents/e.pdf
■ 容器の違いによって“使える成分”が変わってしまう
化粧品や日用品では、これまでPETボトルやガラス瓶などの硬質容器が主流でした。しかし近年は、環境負荷の低減や使いやすさを理由に、リフィル用途などで軟包装が広く採用されています。
ただし、容器が変わると硬質容器では問題にならなかった「成分の吸着」という新たな課題が発生し、硬質容器では問題にならなかった成分でも、軟包装ではシーラントフィルムに吸着し、配合量や効果に影響を与えることがあります。
そのため、軟包装を採用する場合は、成分の吸着を考慮した製品設計が不可欠です。吸着の影響が大きい場合、本来配合したい成分を使用できず、商品の付加価値やコンセプトそのものが制限されることもあります。
結果として、リフィル化を断念したり、成分スペックを見直したりするケースもあり、商品力の低下につながることが課題となっています。
では、低吸着性はどのような材料設計によって実現されているのでしょうか。ここでは代表的な素材であるPAN、COP、PETについて、そのメカニズムと特徴を紹介します。
■ 成分吸着を抑えるポイントは2つ
シーラントへの成分吸着は以下の図のように、内容物成分がシーラントに取り込まれることによって発生します。この吸着現象は、大別して次の2つの要素によって決まると考えられています。
① 有効成分とシーラントの相溶性(なじみやすさ)
② シーラント内部での成分の拡散しやすさ(自由体積)
PAN、COP、PETは、「内容物とのなじみにくさ(相溶性)」と「シーラント内部への入り込みにくさ(拡散性)」のいずれか、または両方によって低吸着性を発現していると考えられています。
このうち相溶性は、水と油が混ざりにくいように、性質の異なる物質同士はなじみにくいという考え方です。材料開発では、その指標として溶解度パラメータ(SP値)が用いられることがあり、一般的にはSP値が近いほど相溶しやすいとされています。
ただし、実際の吸着挙動はSP値だけでは説明できない場合も少なくありません。特に化粧品や医薬部外品のような多成分系では、成分同士の相互作用も影響するため、挙動はより複雑になります。
そのため、シーラントの選定においては、理論値による予測だけでなく、実際の内容物を用いた評価を行うことが重要です。
以下に各素材の特徴を簡単に示します。
PAN(ポリアクリロニトリル)
高結晶性・高密度であることに加え、シアノ基(CN基)による強い極性を持つことが特徴です。これにより成分の侵入や拡散を抑制し、優れた低吸着性能を発揮します。
COP(シクロオレフィンポリマー)
一般的なPEやPPと比べて密度が高く(1.05g/cm3)、ガラス転移温度も室温より高いことから、成分が内部へ浸透しにくい特性があります。また非極性材料のため、水系処方など極性の高い成分に対して吸着しにくい傾向があります。
PET(ポリエチレンテレフタレート)
COPと同じく高密度であることと、ガラス転移温度が室温より高いことで成分が内部へ浸透しにくい特性があります。それに加え、カルボキシル基(COOH)やヒドロキシル基(OH)に由来する極性により、非極性成分に対して特に低吸着性効果があると考えられています。
以下の表に、各素材のメリットとデメリットをまとめました。低吸着シーラントそれぞれの素材に共通する注意点として、ボイル・レトルトといった熱水処理は向かないケースが多いです。加えて、内容物が液体の場合、通常よく使われるLLDPEに対して密度が高い(柔軟性に劣る)ため、包装袋が落下したときに破袋するリスクは大きくなります。液体包装の場合は、層構成や袋の形状・容量、シール条件などを注意深く検討する必要があります。
低吸着シーラントは、包装材の最内面として使用されるため、内容物を密封するためのヒートシール性能が求められます。そのため、一般的には無延伸、または延伸される場合は低配向度となるような条件で製膜されます。
代表的な製造方法としては、チューブラー法(インフレーション法)が広く知られています。これは、原料となる樹脂を溶融押し出しし、必要に応じてブロー延伸を行う方式のことです。
また、それ以外にも押出ラミネート法も採用されています。これは、基材フィルムであるPETやナイロンなどの上にあらかじめアンカーコートなどを塗布し、その上から低吸着シーラント層となる樹脂を溶融押し出しして密着させて積層する方式です。
押出ラミネート法の大きなメリットは、無延伸シーラントだけでは不足しがちな機械強度や耐熱性を基材フィルムで補えることです。そのため、低吸着性能と包装材としての実用性能を両立しやすくなります。
東洋紡オリエステル®は、低吸着性と包装材としての実用性能を高次元で両立したPET系シーラントフィルムです。
PET系素材を使用した業界唯一の二軸延伸シーラントフィルムであり、低吸着性に加えて、高い強度・耐熱性・加工適性を兼ね備えています。
上述の通り、一般的に低吸着シーラントはヒートシール性を確保するため、無延伸または低倍率延伸で製造されます。一方、オリエステル®は、PETフィルムやナイロンフィルムの製造で広く用いられるTダイ逐次二軸延伸法によって製膜されています。
<Tダイ逐次二軸延伸製膜方式 工程模式図>
この製法では、二軸延伸と熱処理により、高い耐熱性と優れた機械強度を付与できる反面、シーラントに不可欠な熱シール性を実現することが難しいとされてきました。
東洋紡は長年培ってきた製膜技術を活用し、この課題を克服。二軸延伸フィルムならではの高耐熱性・高機械強度を維持しながら、高い熱シール性を両立することに成功しました。
その結果、オリエステル®は、低吸着性能に加え、包装材に求められる強度や耐熱性も兼ね備えたシーラントフィルムとして、多様な包装用途への展開を可能にしています。
なお、内容物への直接接触用途におけるオリエステルの認証取得状況は、以下の通りです。
日本:PL収載物質を原料として使用、370号溶出試験合格
FDA:カテゴリE(室温保存)におけるオピニオンレターを取得
オリエステル®と無延伸PETシーラントの性能を比較した表を以下に示します。
以下では、汎用シーラントであるCPP、LLDPEとの比較で、オリエステル(品番DE046)の各種物質に対する吸着性を評価した結果を示します。
検証① 極性の異なる5種物質の吸着評価
〔評価方法〕
三方シールした袋に各吸着対象物質の水またはエタノール溶液を入れて封をし、30℃環境下20時間保管した後、シーラントに吸着された物質の重量をガスクロマトグラフィーで定量(n=3)
〔吸着対象物質〕
L-メントール、D-カンファー、D-リモネン、サリチル酸メチル、オイゲノール
〔評価結果〕
〔考察〕
今回の試験では、オリエステル®(DE046)はL-メントール、D-カンファー、D-リモネンに対して非常に高い低吸着性能を示しました。一方で、サリチル酸メチルやオイゲノールでは、CPPやLLDPEの方が吸着を抑える結果となりました。
これは、成分とシーラント素材の「相性」の違いによるものと考えられます。一般的に、性質が似ているもの同士はなじみやすく、異なる性質のもの同士はなじみにくい傾向があります。例えば、水と油が混ざりにくいのと同じように、オリエステル®と性質の異なる成分はシーラント内部へ入り込みにくく、吸着が抑えられます。一方で、性質が近い成分は吸着しやすくなる場合があります。
つまり、「どの低吸着シーラントが優れているか」ではなく、「どの成分に対して適しているか」が重要です。そのため、実際の製品開発では内容物に合わせて最適なシーラントを選定することが求められます。
検証② 酢酸トコフェロール(ビタミンE)の吸着評価
〔評価方法〕
三方シールした袋にビタミンE製剤を入れて封をし、50℃環境下で2、4週間保管した後、製剤中のビタミンE残存量をガスクロマトグラフィーで定量し、初期のビタミンE存在量に対する残存率として算出(n=2)
※保管期間中の溶媒透過による濃度変化は、製剤の重量から補正
〔吸着対象物質〕
酢酸トコフェロール(ビタミンE)
〔評価結果〕
〔考察〕
ビタミンEを用いた評価では、オリエステル®(DE046)は50℃で4週間保管した後も約98%の成分が残存していました。一方、LLDPEでは約75%まで低下しており、オリエステル®の優れた成分保持性能が確認されました。
この理由の一つは、ビタミンEがオリエステル®に吸着されにくい性質を持つためです。さらに、オリエステル®は密度が高く、成分がフィルム内部へ移動しにくいことも、残存率の高さにつながっていると考えられます。
有効成分の含有量が厳しく管理される医薬品や医薬部外品では、製造後から流通、店頭販売、そして消費者の保管期間まで、長期間にわたって成分を維持することが重要です。オリエステル®を使用することで、有効成分の減少を抑えやすくなり、品質管理の負担軽減にもつながります。
また、保管中の成分減少を見越して余分に成分を配合する必要が少なくなるため、品質向上だけでなくコスト低減も期待できます。
採用例:資生堂様アイマスクへのご採用事例
非吸着性能と、紙と貼り合わせる際の加工適性が評価されたケース
https://www.toyobo.co.jp/news/2026/release_1960.html
オリエステルは、ここで紹介したDE046の他、下記のラインナップもあります。
詳しくは東洋紡パッケージング事業総括部へお問い合わせください。
※上記で掲載しているデータは参考値であり、保証値ではありません