当社グループがバイオ事業を始めたのは、1940年代のこと。レーヨン生産の原料となるパルプを作るときに出る廃液中の酵母に着目し、酵母培養によるパルプ廃液処理の研究を始めたのがきっかけです。その後、酵母関連事業は一旦廃止になりましたが、尿酸を分解する酵素「ウリカーゼ」に可能性を見つけ、研究を進めていました。「当時は繊維以外の新しい事業として、バイオテクノロジー分野に進出しようと試行錯誤していた時期。本格的に参入するには商品が必要でした」(服部、舛岡)
研究の結果、1978年には尿酸測定用診断薬「ウリカラー400」が上市されました。ライフサイエンス分野への本格的進出がスタートしたのもこの時です。さらに1982年には酵素技術を活用してライフサイエンス試薬を発売。現在は診断薬や診断薬用酵素だけでなく、測定機器も続々と登場しています。
医療現場で活躍している当社グループの商品のうち、代表的なのが尿中有形成分分析装置「U-SCANNER®Ⅱ」です。これは尿中の赤血球など有形成分を分析する装置で、1時間に100人分検査するという並外れた処理能力を持ちます。さらに標本の作成から判定まで全自動で行うため、検査技師の手間を取りません。高精度な画像解析プログラムによる正確な結果はもちろん、検査の効率化によって、医療現場では患者さんから「待ち時間が短くなった」と好評をいただいています。今までの医療現場の常識を覆す画期的な装置として、臨床検査市場で注目を集めています。
現在、人手不足という深刻な問題を抱えている病院では、検査の精度と効率化の両立が求められています。そうした中、当社グループは高性能でコンパクトな商品群を提供することで、検査の品質向上や効率化を促進したいと考えます。「当社グループには試薬を開発するノウハウの他に、装置を作るグループ会社(ミユキエレックス(株))のノウハウがあります。試薬も装置も一体となって開発できる強みを活かし、患者さんをはじめ医療関係者の皆さんに喜ばれる商品を作っていきたいです」(服部)
ニーズに応える臨床検査装置が続々登場!
小型化学発光免疫自動分析装置「POCube®」
コンパクトかつ5分程度で測定できるため、救急医療や病室内など活用の場所を問いません。現在はC反応性タンパクの測定が可能で、今後はインフルエンザウイルスなど、測定項目を増やし、より利便性を高めていきます。
「GENECUBE®」
遺伝子から病原因子を特定する検査装置。世界で初めて血液以外の生体試料でも自動で遺伝子検査が行える装置として注目を集めています。また、有効な医薬を判定するなど、さまざまな用途への使用が期待できます。
- ●酵素
- タンパク質を基として構成される、体内の化学反応に対して触媒として機能する分子。
- ●尿酸
- 体内の細胞の老廃物で、尿酸の血液中における濃度(尿酸値)が高いと動脈硬化などを引き起こす原因となります。
- ●赤血球
- 血液の主成分の一つ。尿中に赤血球が含まれる場合は、内臓に何らかの異常があると考えられています。
- ●C反応性タンパク
- 発熱や細菌感染など、体内で炎症反応や組織の破壊が起きているときに血中に現れるタンパク質。
- ●ライフサイエンス試薬
- 遺伝子を切断する酵素や遺伝子を増やす酵素などを使用した試薬