堤は2006年当初、シリコンチップの基盤用途を見据えてゼノマックス®︎の検討に携わっていた。「ゼノマックス®︎の採用先であり共同検討先でもあるプリント基板メーカーとも協働しながら取り組んでいました」。しかし、検討開始から約2年が経過した2008年にリーマン・ショックが発生。プリント基板メーカーの内部事情が悪化したことで、ゼノマックス®︎の採用が見送られ検討が中止に。急遽、ほかの用途を模索することを余儀なくされた。
堤たちは新しい用途開発に向けた活動の一環として、高機能フィルム関連の展示会にゼノマックス®︎を出展。すると、ある大手家電メーカーの開発者がゼノマックス®︎の物性に目を留めた。「ディスプレーに使われる薄膜トランジスタの回路基盤を、従来のガラスからフィルムに置き換える用途で使いたい、というお話をいただきました」。
薄膜トランジスタなどの電子回路は、加工のプロセスにおいて超高温に晒されることになる。そのため、これまでは高温下での寸法変化が微小なガラス基板の上に回路を形成していた。しかし、ディスプレーの軽量化や薄型化、フレキシブル化が加速したことで、メーカーは「薄くて軽くて曲げやすく、かつ熱に強い素材」を探し求めていたのだ。「これらはまさしくゼノマックス®︎の特性と一致します。ディスプレーの軽量化・薄型化の限界に挑んでいた大手家電メーカーにとって、ゼノマックス®︎はこれ以上ないフィルムだったんです」。