抗体医薬品製造プロセス精製工程向けに分離膜デバイスを新開発
~従来方式の代替で精製時の作業工程数を4分の1に削減、生産性向上に貢献~
東洋紡株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:竹内郁夫、以下「当社」)はこのほど、大塚化学株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:土佐浩平、以下「大塚化学」)とのアライアンス契約※1に基づく取り組みの成果として、抗体医薬品製造プロセスにおける精製工程向けの分離膜デバイスを新たに共同開発しました。従来のカラムクロマト方式に替えてこの分離膜デバイスを採用することで、精製に掛かる作業工程数を4分の1に削減可能、生産性の向上に貢献します。4月末より、医薬品メーカーや研究機関等向けにサンプル提供を開始しています。
分離膜デバイスに充填される中空糸とその断面写真
分離膜デバイス外観
抗体医薬品とは、特定の抗原に結合する性質の抗体を利用した医薬品です。病気の原因となる細胞や分子にある抗原を目印としてピンポイントで攻撃するよう設計できるなど、高い治療効果や副作用の軽減が期待されており、2030年まで年率約15%※2で市場の拡大が見込まれています。抗体医薬品の製造プロセスは、主に細胞を培養して抗体を生産するための工程と、培養した細胞から医薬品の有用物質である抗体を精製・回収する工程に分かれており、後の精製工程が全体の約6割のコストを占めると言われています※3。精製工程では、細胞片や凝集タンパク質、負電荷を帯びた不純物などを除去し、抗体を分離・回収します。これまで一般的に用いられてきたカラムクロマト方式の場合、多段階の煩雑な作業ステップが必要となるため、精製工程の効率化による生産性向上が課題とされていました。
このほど新たに共同開発したのは、大塚化学の精密合成・重合技術を活用した荷電性ポリマーを、東洋紡の微細加工・製膜技術により中空糸膜化した、抗体医薬品の製造プロセスにおける精製工程向けの分離膜デバイスです。主な分離対象となる陰性荷電性物質の吸着性能に優れた特殊ポリマーと、中空糸膜の孔径を内側と外側とで非対称にする独自の膜構造を採用。この分離膜を通して抗体医薬原液をろ過するだけで、細胞片や凝集タンパク質、負電荷を帯びた不純物といった分離対象となる不要物質を除去するとともに、目的の抗体を効率的に取得できます。従来主流のカラムクロマト方式では、抗体の結合、洗浄、溶出、精製といった煩雑な作業ステップが必要だったのに対し、本製品では一度の精製・回収作業で済ませられるため、作業工程数を4分の1に削減可能、作業時間の大幅な短縮が期待できます。また、大型の洗浄装置や廃液処理設備を設置する必要が無くなるため、工程の省スペース化にも役立ちます。さらに、非対象の膜構造は目詰まりの抑制にも効果的で、高い処理液量を維持しながら膜の交換頻度の低減にも寄与するため交換作業に掛かる労務費の削減が見込めるなど、生産性の向上に貢献します。
当社は今後、本製品を製薬メーカーの試験生産プロセス用として積極的に展開を図りながら、2025年度中に量産を開始する予定です。また、理化学機器メーカー向けのサンプル提案に注力するなど本製品のさらなる採用拡大に努めることで、2030年度に医薬品向けプロセス膜用途で数十億円規模の売上を目指していきます。
※1: | 2024年6月24日付 当社プレスリリース:https://www.toyobo.co.jp/news/2024/release_1626.html |
※2: | 抗体治療薬市場レポートなどをもとに当社予測 |
※3: | 統計資料などをもとに当社推計 |
■ 東洋紡㈱の概要
・所在地: | 大阪府大阪市北区梅田一丁目13番1号 大阪梅田ツインタワーズ・サウス |
・代表者: | 代表取締役社長 竹内郁夫 |
・事業内容: | フイルム、ライフサイエンス、環境・機能材、機能繊維分野における各種製品の製造、加工、販売 |
■ 大塚化学㈱の概要
・所在地: | 大阪市中央区大手通3丁目2番27号 |
・代表者: | 代表取締役社長 土佐 浩平 |
・事業内容: | 化学品の製造、販売 |
大塚化学株式会社のリリースはこちらです:https://www.otsukac.co.jp/topics/cell%20separation%20device.html
以上
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東洋紡株式会社 コーポレートコミュニケーション部 広報グループ
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