気候変動

長期ビジョン・KPI

気候変動に関する国際的な枠組みである「パリ協定」は、気温上昇を産業革命前から「2℃未満」、できれば「1.5℃」に抑えることを目標に掲げています。近年、同協定の目標達成に向けて世界各国で「2050年に温室効果ガス(GHG)の排出量を実質ゼロ」とするための取り組みが加速しています。

当社グループではこうした社会環境を重視し、また気候変動が事業に及ぼす影響をリスク・機会の両面から認識し、2050年度までにGHGの排出量をネットゼロ(実質ゼロ)とする「カーボンニュートラルの実現」を目標に掲げています。現在、日本経済団体連合会の低炭素社会実行計画に日本化学繊維協会を通じて参画し、目標達成に向け取り組んでいます。また、GHG排出量についてはエネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)および地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)に従い適切に報告しています。

事業活動におけるGHG排出については、生産活動における生産効率向上や燃料転換などに取り組むことで排出量削減を推進するとともに、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入も進め、2050年度までにネットゼロを目指します。また、製品の軽量化や原材料の見直し、グリーン物流の推進などによりバリューチェーン全体のGHG排出量削減に取り組むとともに、当社グループ独自の製品・技術によるソリューションを通じたGHGの削減貢献量拡大を進めます。具体的には、海水淡水化プラントの省エネ化に貢献するRO中空糸膜の開発や、自動車の燃費向上に貢献するエンジニアリングプラスチックの軽量化、風力発電や浸透圧発電に用いられるフィルムやFO膜などの提供、室内光で世界最高クラスの高発電効率を誇る有機薄膜太陽電池セルの開発、CO2を分離・回収するカーボンリサイクルの技術開発などを進めていきます。これらによって削減できたGHGを「削減貢献量」として算出し、2050年度までにバリューチェーン全体での排出量以上とすることでカーボンニュートラルの実現を目指します。

  • ※ Greenhouse gas

主な施策

マテリアリティ
関連するESG:E:環境 SDGs7SDGs13
温室効果ガス削減

カーボンニュートラル戦略推進体制

2021年4月には、カーボンニュートラルの実現に向けた当社グループの戦略策定と推進を目的として、「カーボンニュートラル戦略検討会議」および「カーボンニュートラル戦略検討クロスファンクションチーム」を設置しました。

統括執行役員をメンバーとするカーボンニュートラル戦略検討会議は、全社一丸となってカーボンニュートラルの実現に着実に取り組んでいくために三つの視点から戦略とマイルストーンを策定します。全社横断的なメンバーで構成されるカーボンニュートラル戦略検討クロスファンクションチームは、長期的な視点でイノベーションの促進やアライアンスの推進、研究開発の加速、新たなソリューションビジネスの創出など、実質的な施策に取り組みます。

カーボンニュートラル戦略策定の視点
①当社グループの生産活動に伴うGHG排出量の最小化を目指す
②当社グループの提供するソリューションにより、GHG排出量削減、ひいてはカーボンニュートラルに貢献する
③GHGの分離・回収などの技術開発に注力する


品質保証本部

TCFDへの賛同およびTCFDコンソーシアムへの参画

東洋紡グループは、2020年1月、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:以下、TCFD)の提言へ賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなる「TCFDコンソーシアム」に参画しました。

TCFDは、主要25カ国・地域の中央銀行、金融監督当局などの代表を参加メンバーとする金融安定理事会(FSB)により設置され、その提言において、企業・団体などに対し、気候関連のリスクや機会について情報を開示することを推奨しています。わが国においても、経済産業省により「気候関連財務情報開示ガイダンス(TCFDガイダンス)」が公表されるなど、TCFD提言への対応に向け整備が進められています。

当社グループは、企業の「めざす姿(Vision)」として「素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループ」になることを掲げています。その一環として、気候関連の課題解決につながる製品・サービスの提供を通じて、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、自らも長期的に成長することを企図しています。2019年には、「地球温暖化に関する長期ビジョン」を定め、2050年度の温室効果ガス排出量をネットゼロ(2013年度比)にすることなどを目指しています。

このTCFD提言への賛同表明とコンソーシアムへの参画を機に、気候変動がもたらす事業へのリスクと機会について、分析と対応を一層強化し、関連情報の開示を拡充することで、ステークホルダーの皆さまへの説明責任を果たしていきます。

GHGの削減

2020年度に、中間目標(2030年度)を従来の「17%削減(2013年度比)」から「30%削減(Scope1+2、2013年度比)」へ、短期目標を従来の「年1%削減(2013年度比)」から「年1.8%削減」へと引き上げ、削減活動を加速しています。なお、目標については達成状況により見直しを行っていく予定です。

2019年度には、当社グループで4台目となるガスコージェネレーション設備を敦賀事業所に建設しました。今後は、再生可能エネルギーの導入やCO2フリー燃料への転換の可能性についても検討していきます。

  • ※ クリーンな都市ガスを燃料とし、発電時に出る廃熱で蒸気や温水を発生させ、生産プロセス・給湯・冷暖房などに利用する仕組み

GHG排出量

2020年度の排出量は、Scope1、Scope2の合計で約902千トン-CO2となり、基準年度(2013年度)からは26%減となりました。2019年度からの増加は、当社グループに加わった宇都宮工場からの排出量が追加された影響があります。

GHG排出量はKPIに設定しており、引き続き、省エネ化や生産効率向上、再生可能エネルギーの導入や燃料転換により目標の達成に向け推進します。

Scope1,2 GHG排出量(国内・海外)

スコープ1,2 GHG排出量(国内・海外)

  • 国内合計:東洋紡(株)と国内連結子会社の合計
  • 海外合計:海外連結子会社の合計

Scope3排出量

サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量(2020年度)

スコープ3排出量の排出イメージ図

  • ※ 集計範囲 Scope1+Scope2:グローバル、Scope3(カテゴリ3):グローバル、Scope3(カテゴリ3以外):東洋紡(株)

サプライチェーンにおいては、原材料の購⼊に伴う排出量が最も多いことから、今後もグリーン調達を進めていきます。

エネルギー消費量

2020年度のエネルギー使用量は、13,166TJです。生産量の増加により、昨年度比10%増となりました。

物流における省エネの取り組み

トラック輸送と船舶輸送の図

物流におけるCO2排出量原単位を、毎年、前年度比で0.5%削減することを目標としています。

物流部門では、2006年からグリーン物流推進プロジェクトを立ち上げ、品質向上、コスト合理性とともに、省エネルギー、省資源、地球温暖化防止など環境保全に継続的に取り組んでいます。これまで、物流に関わる環境負荷低減のため、事業所の最寄り港を活用することによる輸送距離の短縮や、荷物を効率的に積み合わせ、まとめて輸送することによる車両の走行台数削減など、さまざまな取り組みを実施してきました。また、トラックでの輸送よりもエネルギー原単位が小さく、CO2排出量の少ない船舶輸送や鉄道輸送の積極的な利用も進めています。

2014年にはこれらの活動が評価され、国土交通省、経済産業省、日本ロジスティクスシステム協会、日本物流団体連合会が共同で実施しているグリーン物流パートナーシップ会議にて「グリーン物流パートナーシップ会議特別賞」を受賞しました。

2015年度は、原料の一部について、これまで岡山県から福井県へトラック輸送していましたが、発地が広島県へ変更されるにあたり、広島県から福井県へ船舶を使った輸送へ切り替えを実施しました。トラックから船舶に変更することにより、CO2は約1,000トン削減(46%削減)、エネルギー原単位は3%低減することができています。

2019年度には、一部製品の海外輸出において、これまでは福井県敦賀事業所から神戸港へトラック輸送していましたが、最寄り港(敦賀港)を利用することで、CO2は59トン(0.2%削減)、エネルギー原単位は0.3%低減することができています。

2020年度には、大垣倉庫から北陸方面への出荷に対し、敦賀への帰り便を活用しトラック便数を減らすことで、CO2は56トン削減(0.2%削減)しました。 また、海外関係会社製品を東京港から宇都宮経由で北陸へ輸送していたところを、四日市港から大垣経由で北陸へ輸送することで陸送距離を短縮し、CO2 は78トン削減(0.2%削減)しました。

物流における省エネの取り組みイメージ図

オフィスにおける省エネルギーの取り組み

当社グループでは、本支社を含むオフィスにおいて照明器具のLEDへの転換、コピー用紙の削減、社用車のエコカーへの転換などを進めています。

再生可能エネルギーの導入

マレーシアでは現在、クリーンエネルギーの導入が推進されています。TOYOBO TEXTILE(MALAYSIA) SDN.BHD.では新工場の建設にあたり、太陽光発電の導入を決定しました。全ての計画が完了すれば、工場全体で使用する約7%のエネルギーを太陽光発電で賄える予定です。CO2削減量は915トン/年で、これは当社グループのエネルギー使用量の0.1%の削減に相当します。

GHG排出量削減に向けた貢献事例

GHG排出量削減に向けた貢献事例

再生可能エネルギーである、高塩濃度地熱水を利用した浸透圧発電に注目が集まっています。当社は、この方法に用いられる発電プラントの基幹部に用いられる正浸透膜(FO膜)を開発し、欧州の発電プラントで実証実験を行っています。

地熱水浸透圧発電は、地下からくみ上げた高塩濃度の地熱水が持つ高い浸透圧を利用します。太陽光や風力に比べ天候や昼夜に左右されないという特長があり、1MW規模の地熱浸透圧発電1プラント当たり、石炭火力発電と比べると年間のCO2排出量を7,200トン削減できます。さらに、燃焼時に排出される窒素酸化物や硫黄酸化物のような有害物質も全く排出されません。

FO膜は、現在、欧州の製塩工場においても高濃度塩水を使用した実証実験を実施しており、早期の実用化を目指しています。