サステナビリティ・マネジメント

担当役員コミットメント

事業を通じた社会課題の解決と着実に推進する取り組みでサステナブルな成長を実現します

藤原信也

常務執行役員
サステナビリティ推進本部長
藤原信也

東洋紡グループは、サステナビリティへの取り組みを2020年度から強化し、この3年間で一定の成果を上げることができました。2022年5月に公表した長期ビジョン「サステナブル・ビジョン2030」では、想定した2030年の社会像から、気候変動、生物多様性、人権など私たちの貢献により解決する五つの社会課題を定めました。

気候変動対策では、GHG排出量削減計画を見直し、Scope1、2の2030年度削減目標を従来の2013年度比30%から46%以上に引き上げるとともにScope3の削減目標を新たに設定しました。この削減目標は、パリ協定が定めた水準に沿っていると認められ、2022年12月に世界的なイニシアチブであるScience Based Targets(SBT)の認定を取得しました。さまざまなステークホルダーとの連携を強化し、サプライチェーン全体でGHG排出量の削減に取り組んでいきます。

生物多様性保全では、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全を目指す「生物多様性のための30by30アライアンス」に2022年11月に参画し、併せて、当社グループが保有する社有林のOECM国際認証を申請しました。生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴールに向けた活動を行っていきます。

ビジネスと人権に関しては、2020年10月に「東洋紡グループ人権方針」を定め、サステナブル・ビジョン2030では、<サプライチェーン全体での人権尊重>をトップに掲げました。2022年度から人権デューデリジェンスに着手し、当社グループに関しては、外国人技能実習生の運用状況をつぶさに把握することを優先課題として国内から取り組み、今後、順次海外に展開します。またサプライチェーンに関しては、お取引先の皆さまに「 CSR調達ガイドライン」を制定、方針をご理解いただき、課題のある取引先の方々とは対話させていただくなど、取り組みを進めています。

企業のサステナビリティは、事業を通じて社会課題を解決することです。
私たちは、社会課題の解決に直接貢献する多くの製品、ソリューションを有しており、それらを拡大するとともに、過去に培った技術ストックを進化、融合し、新たなビジネスを創出します。 例えば、リサイクル・バイオマス原料使用、薄肉化などとScope1、2 削減の組み合わせにより、カーボンフットプリントを削減した製品の拡大。省エネ・再エネによる海水淡水化や水の再利用、膜を用いた発電、電気自動車のバッテリー製造で使用される揮発性有機化合物を回収・再利用する装置など、気候変動対策や生物多様性保全に貢献する製品やソリューションを拡大していきます。

PCR検査用の遺伝子検査試薬は、新型コロナウイルスなどの 感染症対策に貢献していますが、遺伝子検査試薬のコア技術である「高分子技術」と「バイオ・メディカル技術」を融合させる「バイオものづくり」 は、気候変動対策・生物多様性保全、双方の課題を解決するビジネ スを創出できます。例えば、未利用バイオマス利用の基礎研究にも着手しました。将来は当社グループの社有林の間伐材などからの原料製造の可能性も秘めています。

私たちは、1882年の創業以来、その時々の社会課題解決に貢献する事業を営み、事業ポートフォリオを入れ替えてきました。創業者・渋沢栄一の座右の銘の一つであった『順理則裕』を企業理念とし、人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループになることを目指しています。

サステナブルな成長志向、すなわち、社会のサステナビリティに貢献することにより、サステナブルな成長を実現する会社になる。その意識の浸透、推進が私の責務です。

考え方・方針

考え方

当社グループは、1882年の創業時から、日本初の民営会社による大規模紡績工場として、衣料用繊維の普及を通じ、社会のよき一員としてさまざまな課題に取り組んできました。また時代とともに事業を拡大・成長させ、人々のよりよい生活の実現を目指し、環境を中心とした社会課題の解決にも貢献してきました。

そして2019年、企業理念『順理則裕』を再定義し、それをベースに議論を重ね、理念体系「TOYOBO PVVs」を再整備しました。議論の過程を通じ、当社グループのこれまでの営みは「人と地球のサステナビリティ」の確保に貢献することに、その本質があると確信しました。2022年5月、「サステナブル・ビジョン2030」を公表しました。

持続可能な社会の実現に貢献することは、「私たちは、素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループになります」という当社グループのVision(めざす姿)の実現に他なりません。これこそが当社グループのサステナビリティに対する考え方を示すものです。

同時に、重要なことは、「持続的な企業価値の向上」です。持続可能な社会の実現に資する当社グループの貢献が、収益となって当社グループの企業価値向上につながり、この企業価値の向上が、当社グループの事業成長を通じて、次の「持続可能な社会の実現」につながります。この正のスパイラルを続けることが、当社グループが考える「サステナビリティ」です。

ステークホルダーのご期待に応えるために、情報発信を一層強化するとともに、全社一丸となってこの活動を推進するために、全従業員のサステナビリティの「自分ごと化」にも積極的に取り組みます。

方針

  1. 社会の持続可能性に配慮した経営、ひいては当社の持続可能性を向上させる経営
  2. 強固な経営基盤を構築するサステナビリティ:経営基盤軸(ESG)
  3. 競争力を強化し、成長をけん引するサステナビリティ:事業軸(CSV)

概念整理 サステナビリティ/CSV/ESG

サステナビリティアプローチイメージ図

サステナビリティ・マネジメント体制

当社グループは、サステナビリティ委員会(委員長:社長)を設置しています。2022年度は、年4回開催し、全社のサステナビリティ活動の進捗を確認するとともに、①GHG排出量削減目標、②ネイチャーポジティブ、③地政学リスク、④ISSBなどの要請を踏まえた委員会体制などをテーマに議論しました。

 

2023年4月、コーポレートガバナンス・コードや国際的なサステナビリティ基準で求められる「サステナビリティ経営」推進の一環としてサステナビリティ委員会のあり方を見直し、全社長期戦略に関わる中長期のサステナビリティテーマを中心に統合的に一元管理できる体制に刷新しました。
新体制では、従来サステナビリティ委員会の傘下に設置していた八つの委員会の役割を担当部門に移管し、その責務において活動を推進します。なお、全社横断的な議論や作業が必要な「リスクマネジメント委員会」および「コンプライアンス委員会」は継続し、新たに「気候変動・生物多様性委員会」を設置しました。
2023年度からは、サステナビリティ委員会は年6回の開催とし、将来の「ありたい姿」につながるサステナビリティの取り組みを推進する委員会として、重要課題(マテリアリティ)を統合的に討議するとともに、リスクと機会の観点から、戦略、施策、指標を審議し、進捗を管理しています。

サステナビリティを担当する役員は、サステナビリティ推進本部長(常務執行役員)です。サステナビリティ推進本部を設置し、同本部は各種の具体的な施策の立案や推進、対外的な発信および対話の促進を担っています。

サステナビリティ推進体制

2023年4月1日現在

サステナビリティ推進体制図

サステナビリティ活動への取り組み

当社グループは創業以来、創業者の渋沢栄一が座右の銘の一つとした『順理則裕』の理念に基づき、社会をゆたかにすることで自らの事業をも成長させる考え方、すなわち、現代のCSVを先取りして実践してきました。

2020年度から本格的にサステナビリティ経営を志向し活動を推進しています。特にカーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、人権、人的資本、生物多様性などの取り組みに注力し、戦略を策定した上でマイルストーンを設定しています。

年月 取り組み内容
2020年1月 国連グローバル・コンパクトに署名するとともに、「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入
TCFD(気候関連財務情報開⽰タスクフォース)提言への賛同を表明
2020年4月 サステナビリティ推進部を設置。 ESG要素を経営や戦略に取り込み、ステークホルダーへの情報発信を強化
社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置(CSR委員会を改称)
2021年4月 サステナビリティ推進部を社長直轄とする
社長を委員長とするリスクマネジメント委員会を設置
カーボンニュートラル実現に向けた推進体制を構築。「カーボンニュートラル戦略検討会議」および「カーボンニュートラル戦略検討クロスファンクションチーム」を設置
2022年4月 サステナビリティ推進本部を設置
2022年5月 「サステナブル・ビジョン2030」公表
「2050年までのGHG排出量削減計画」策定
2022年11月 「生物多様性のための30by30アライアンス」に参画
2022年12月 「SBT認定」取得
2023年4月 サステナビリティ委員会体制を刷新

イニシアチブへの参画

国連グローバル・コンパクト(UNGC)

2020年1月に、UNGCに署名するとともに、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入しました。これは、責任ある企業市民としてグローバルな課題を解決し持続可能な成長を実現するという趣旨に賛同したためです。また、「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」の各分科会への参加を通じて、情報収集を行い日々の活動に生かしており、「ESG」「サプライチェーン」「環境経営」「関西」「レポーティング研究」などの分科会に参加しています。

今後、UNGCの10原則にのっとった取り組みを強化し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

国連グローバル・コンパクトロゴ

UNGCの10原則

人権 原則1:
人権擁護の支持と尊重
原則2:
人権侵害への非加担
労働 原則3:
結社の自由と団体交渉権の承認
原則4:
強制労働の排除
原則5:
児童労働の実効的な廃止
原則6:
雇用と職業の差別撤廃
環境 原則7:
環境問題の予防的アプローチ
原則8:
環境に対する責任のイニシアティブ
原則9:
環境にやさしい技術の開発と普及
腐敗防止 原則10:
強要や贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗防止の取組み

気候関連財務情報開⽰タスクフォース(TCFD)

当社グループでは、気候変動が当社グループやステークホルダーにもたらす影響の大きさを認識するとともに、「脱炭素社会&循環型社会」をマテリアリティの一つとして特定しています。2020年1月には、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)提言に賛同し、要求に応じた取り組みと開示を進めています。

2℃未満シナリオと4℃シナリオを踏まえ、気候変動に特化した当社グループのリスク・機会の抽出 を行いました。2021年度は、フィルム事業を対象にしましたが、2022年度は、当社グループの事業全体に対象を広げました。抽出されたリスク・機会の項目を集約し、社会の変化という観点でまとめ直した上で、それぞれの対策案を検討しました。

TCFDロゴ

WWFジャパン

東洋紡株式会社は、2022年6月より、世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)の法人会員として、WWFの環境保全活動を応援しています。

WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年にスイスで設立されました。人と自然が調和して生きられる未来を目指して、サステナブルな社会の実現を推し進めています。特に、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止のための脱炭素社会の実現に向けた活動を行っています。

WWFジャパンロゴ