業界初※1、中分子医薬品製造プロセス精製工程向け有機溶媒耐性分離膜を開発 ―原料合成から分離・精製工程まで、連続生産プロセスへ適用可能―
東洋紡株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:竹内郁夫、以下「当社」)は、独自の膜技術などを応用することで、業界で初めて※1中分子医薬品の製造プロセスにおける精製工程向けに有機溶媒耐性を持つ分離膜を新たに開発しました。有機溶媒中の反応・合成で得られる中分子医薬品の、原料合成から分離・精製までの工程を連続して行う「連続生産プロセス」への適用が可能、生産効率の向上に貢献します。
今後、本分離膜・技術を活用し、中分子医薬品の受託研究開発製造(CRDMO)※2を行うシンクレスト株式会社(本社:神奈川県藤沢市、代表取締役社長:柴田祐一郎、以下「シンクレスト」)と共同で、中分子医薬品の連続精製装置の早期開発に取り組んでいきます。
新たに開発した中分子医薬品向けの有機膜(分離膜)
分離膜を利用した精製試験装置(ラボスケール)
右側のモジュールに分離膜が組み込まれている
中分子医薬品は、ペプチドや核酸をはじめとする分子量が500~2,000程度の化合物を活用した新しい医薬品です。標的分子への特異性が高いため、低分子医薬品に比べて副作用が少なく、また、抗体医薬品などの高分子医薬品とは異なり化学合成できることから製造コストが抑えられるとされ、次世代の医薬品として注目されています。中分子医薬品の市場は、今後2030年まで年率約10%で拡大すると予測されています※3。
こうした市場のニーズに対応するために製造プロセスの効率化が求められる中、原薬の合成工程(上流)においては連続フロー合成技術の導入が進展しています。連続フロー合成とは、原料を連続的に反応容器に供給し、リアルタイムで目的物を得る新たな製造方法です。従来のバッチ式に比べて反応制御性や安全性、スケーラビリティに優れています。下流にあたる精製工程でも連続化が求められており、バッチ式のカラム精製法に代わる膜分離法の活用などが検討されてきましたが、酸化アルミニウムやゼオライトを素材とする無機膜は、有機溶媒耐性に優れるものの、分離性能が限定的であったり、製膜が難しいなどの課題がありました。一方、ポリスルホンなどを素材とする有機膜は、分離性能に優れていますが、有機溶媒中で溶解・膨潤してしまうなど、既存の膜技術では分離性能と耐溶媒性の両立が困難でした。
かかる背景のもと、当社はこのほど、中分子医薬品の製造プロセスにおける精製工程向けに、有機溶媒環境下での高い耐久性と分離性能を実現する業界初の分離膜を開発しました。当社独自の高分子変性技術と微細製膜技術により、高精度な分離性と、ジメチルホルムアミド、トルエン、アセトンなど広範な有機溶媒への耐性を実現。高濃度な酸・アルカリに対しても優れた安定性を示すことから、有機溶媒を用いる中分子医薬原液の製造プロセスに組み込むことができます。有機ポリマー系材料から構成される本分離膜は、反応原液に含まれる有効成分と不純物を分子量の差に応じて高精度に分離可能。また、本分離膜を用いて連続精製を実現することにより、合成から精製の工程のギャップを解消するとともに、工程間の処理のタイミングを最適化することにつながるため、品質の安定化や生産性の向上に寄与します。さらに、モジュール化した分離膜を集積することで柔軟にスケーラビリティの向上を図ることが可能です。
当社は、今後、独自のフロー合成技術を核とし、中分子医薬品の製造および連続生産プロセスの構築を強みとするシンクレストと共同で、高効率な連続精製装置の早期開発に取り組んでいきます。また、当社は有機溶媒耐性を有する本分離膜を、中分子医薬品だけでなく、低分子医薬品やファインケミカル製品の分離・精製用途などさまざまな分野へ積極的な展開を図ることにより、化学プロセスの効率化と製品の品質向上を両立する新たな生産ソリューションの提供に貢献してまいります。
※1: | 2025年8月6日時点、当社調べ |
※2: | Contract Research, Development and Manufacturing Organization:CRDMOとは、研究段階から製造段階までを一貫して受託対応できる事業形態のこと |
※3: | 中分子医薬品市場レポートなどをもとに当社予測 |
東洋紡株式会社の概要
・所在地: | 大阪府大阪市北区梅田一丁目13番1号 大阪梅田ツインタワーズ・サウス |
・代表者: | 代表取締役社長 竹内郁夫 |
・事業内容: | フイルム、ライフサイエンス、環境・機能材、機能繊維分野における各種製品の製造、加工、販売 |
シンクレスト株式会社の概要
・所在地: | 神奈川県藤沢市村岡東二丁目26 番地の1 (湘南ヘルスイノベーションパーク内) |
・代表者: | 代表取締役社長 柴田祐一郎 |
・事業内容: | 中分子医薬品の受託研究開発製造(CRDMO) |
以上
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